数理教育研究会

灘中学校 算数(1日目)2019(H31)入試分析 その1

今年も入試問題解説をすることになりました。
よろしくお願いします。

最初は灘中学校の1日目です。

【入試資料分析】
まず今年の実質倍率は2.70です。
これはほぼほぼ例年程度でした。
(H24)2.81(H25)2.81(H26)2.97(H27)2.61
(H28)2.67(H29)2.76(H30)2.88(H31)2.70

次に平均点ですが注目すべきは算数です。
第1日目,2日目ともにここ数年で平均点が一番低く
平均点が高かった去年に比べて合計で30点ほど低くなっています。

(教科,受験者平均点,合格者平均点)の順に
(国語1日目,60.0点,63.6点)
(国語2日目,69.1点,75.1点)
(国語合計,129.1点,138.7点)
(算数1日目,38.5点,49.8点)
(算数2日目,44.5点,56.8点)
(算数合計,83.0点,106.6点)
(理科,64.5点,73.2点)
(総合,276.6点,318,6点)

全体的に難易度の高い問題が並びましたが,これは解くのに無理があるであろうというような問題はありませんでした。
算数をよく勉強してきた人にとっては,差をつけることが出来た試験であったと思われます。5割とることができたら,アドバンテージです。

【問題分析】
○大問1
(17-[   ]×77) × 2019/5 = 31+3/5-7/13

[解説]
計算問題です。
31+3/5-7/13 = 2019/65
2019/65 ÷ 2019/5 = 1/13
17-1/13 = 220/13
220/13÷77 = 20/91
素因数に注意して約分されることを意識することで素早く正確に解けます。

○大問2
[ア]/[イ] × [ウ]/[エ] = 1/[オ] の[ア]~[オ]に2,3,4,5,6,7,8,9の数から1つずつ当てはめて式を完成させました。ただし,同じ数を2回以上使うことはできません。また,[ア]/[イ]と[ウ]/[エ]は仮分数でもよく,これ以上約分できない分数です。このとき,[オ]に当てはまる数は[   ]です。

[解説]
5,7は5,7を約数に持つ整数が他にないので使えません。
残りの整数2,3,4,6,8,9において6だけ2と3の両方を約数に持つので[ア]/[イ],[ウ]/[エ]がこれ以上約分できない分数ということなので使えないので,入るとしたら[オ]だけです。
[ア]/[イ],[ウ]/[エ]がこれ以上約分できない分数となるには3の倍数を[ア]か[イ]のどちらか,[ウ]か[エ]のどちらかに入れることになるが,残りの3の倍数は3と9だけです。
つまり3の倍数は約分されずに残ることになるので[オ]は6以外ありません。
[オ]だけわかればよいので素早く6と答えられたら要領が良いですね。

○大問3
A,B,C,D,E,F,G,Hはどの2つも異なる2から9までの数字です。3桁の整数ABCとDEFを足すと4桁の整数10GHになり,この足し算で繰り上がりは百の位から千の位にだけあるとき,GとHの和は[ ① ]です。さらにこのとき,AがDより大きいとすると,ABCとして考えれる3桁の整数は全部で[ ② ]個あります。

[解説]
各桁の数に関する問題のアプローチは筆算や,各桁の数の関係式を作るなどが考えられます。
この問題は足し算で繰り上がりが百の位から千の位にだけあると書いてあるので各桁の数の関係式がたてやすいです。
百の位A+D=10,十の位B+E=G,一の位C+F=H
またA,B,C,D,E,F,G,Hは2から9のどれかですが、このことはよく全部足すと2+3+4+5+6+7+8+9=44で
A+B+C+D+E+F+G+H=44であるという使い方をよくします。
すると10+G+G+H+H=44でG+H=17とわかり,しかも(G,H)は(8,9)か(9,8)の場合しかありません。
A+D=10,A>Dより(A,D)=(7,3),(6,4)
(A,D)=(7,3)の時,残り2,4,5,6で和が8と9になる組み合わせは
2+6=8,4+5=9
よって(G,H)=(8,9)の時は(B,E)=(2,6),(8,6)の2通り,(C,F)=(4,5),(5,4)の2通り
(G,H)=(9,8)の時は(B,E)=(4,5),(5,4)の2通り,(C,F)=(2,6),(6,2)の2通り
で合計2×2×2=8個
(A,D)=(6,4)の時,残り2,3,5,7で和が8と9になる組み合わせは
3+5=8,2+7=9
よって同様に8個で
8+8=16個となります。
灘の1日目でよくある問題なので練習しておきましょう。

○大問4
これはこちらの記事で解説したいと思います。
http://edupastaff.blog82.fc2.com/blog-entry-545.html

○大問5
ある品物を仕入れ,利益を見込んで1個400円で売りました。しかし,いくつか売れ残ったため,売値を半額の200円にして残りをすべて売りました。その結果,売上高は26000円,利益は11600円になりました。品物1個の仕入れ値は1円未満の端数はありません。また,400円で売れた品物の個数は仕入れた品物の個数全体の6割より多く,7割より少ないことがわかっています。このとき,品物1個の仕入れ値は[ ① ]円で,400円で売れた品物の個数は[ ② ]個です。

[解説]
合計の仕入れ値は26000-11600=14400円で
合計の仕入れ値と売上高がわかっています。
よって品物1個の仕入れ値と品物1個の平均の定価の比がわかるのがポイントです。
(仕入れ値):(平均定価)=14400:26000
=36:65
仕入れ値と個数は整数より仕入れ値は14400の約数になります。
400円が6割,200円が4割の時,平均定価は400×0.6+200×0.4=320円で仕入れ値は320×36/65=177.2…
400円が7割,200円が3割の時,平均定価は400×0.7+200×0.3=340円で仕入れ値は340×36/65=188.3…
よって仕入れ値は178,179,…,188のどれかで14400の約数なので180円
合計の品物の個数は14400÷180=80個
400円で売れた品物の個数はつるかめ算より(26000-200×80)÷(400-200)=50個
算数として何か勉強になるように算数的に解きましたが,本番は数式で力技で計算して答えを出すことも大切です。

○大問6
89の倍数と113の倍数を,
89,113,178,226,……
のように小さいものから順に並べるとき,50番目の倍数は[   ]です。

[解説]
50番目までの(89の個数)と(113の個数)は
89×(89の個数)=113×(113の個数)で目星を付けると
(89の個数):(113の個数)=113:89
(89の個数)+(113の個数)=50
より
(89の個数)=50×113/(113+89)=27.97…,(113の個数)=50×89/(113+89)=22.02…
なので89の27倍と113の22倍付近を調べると
89×27=2403,89×28=2492
113×22=2486,113×23=2599
より50番目の数は2492
89-1=8×11,113-1=8×14で11と14では綺麗に50×14/(11+14)=28,50×11/(11+14)=22番目と綺麗に求まることから,89と113の比を考えて最後に調整しろというのがこの問題の意図なのかもしれません。

○大問7
これはこちらの記事で解説したいと思います。
http://edupastaff.blog82.fc2.com/blog-entry-546.html

○大問8
右の図のような点Oを中心とする円について,斜線部分の面積の和は[   ]cm^2です。

H31nada1-8shukushou.jpg

[解説]
まず図のように長さがわかります。
H31nada1-8kaisetu1.jpg

円の半径をAとすると
A×A=5×5×2=50
二つの直角三角形の面積の和は
12×4÷2+6×2÷2=30cm^2

H31nada1-8kaisetu2.jpg

図の斜線部の面積○+☐+△×2は円から2cm×10cmの長方形をのぞいた半分になっているので
斜線部の面積は137
(A×A×3.14-2×10)÷2=68.5cm^2
よって求める面積は斜線部の面積から直角三角形を2つ取り除いて
68.5-30=38.5cm^2
今年(2019年度)の甲陽学院の算数第1日目の平面図形でも使われたよくある処理です。
きっちり典型問題を勉強しておくということと,似たような問題と同じように解けないかアプローチの練習をしておきましょう。

○大問9
右の図で,三角形ABCは正三角形で,面積は1cm^2です。PBの長さがPAの長さの2倍のとき,三角形CPAの面積は[   ]cm^2
H31nada1-9.jpg

[解説]
正三角形の面積の問題なので正三角形のマス目が何個あるかということになるので正三角形方眼紙で考えます。
H31nada1-9kaisetu.jpg

図より三角形APBの形をした三角形は正三角形のマス目4個分の半分よりマス目1個分の面積を[1]とすると三角形ABCの面積は[4]÷2×3+[1]=[7],三角形CAPの面積はマス目1個分の面積より[1]で三角形ABCの1/7倍。よって1/7cm^2となります。

○大問10
表面が青色で塗られている正四面体を,底辺に平行な2枚の平面で高さを3等分するように切り,残りの3つの面についても同様に切ります。このとき,もとの正四面体はいくつかの正四面体といくつかの正八面体に分かれます。2つの面に色が塗られている立体は全部で[ ① ]個あり,3つの面に色が塗られている立体は全部で[ ② ]個あります。
ただし,正四面体とは,右の図1のような,どの面も合同な正三角形でできている三角すいです。また,正八面体とは,右の図2つのような,どの面も合同な正三角形でできている,8つの面をもつ立体です。
H31nada1-10.jpg

[解説]
まず2等分の場合は正四面体4個と正八面体1個ができました。
H31nada1-10kaisetu1.jpg

それを参考にして図のように3等分の上の2段だけで考えると,3面塗られている正四面体1個,3面塗られている正八面体1個,2面塗られている正四面体が3個あります。
3面塗られている正方形と正八面体は1個の頂点に1セット対応(○で表す),2面塗られている正四面体は1つの辺に1個対応(△)であわらします。
H31nada1-10kaisetu2.jpg
すると全体では2面塗られいるのは辺が6つより6個
3面塗られいてるのは頂点が4つより2×4=8個とわかります。

H31nada1-10kaisetu3.jpg
問われてはいませんが○と△を取り除いていくと,上から3段目に図のように太い線を面とした塗られている面のない正四面体が1個残ります。
灘や難関校でよくある問題で,知っているものを使って解きましょう。

○大問11
展開図が右の図のような立体の体積は[   ]cm^3です。ただし,実線で囲まれた三角形は3つの大きな直角二等辺三角形,3つの正三角形,3つの小さな直角二等辺三角形です。また,3本の破線は小さな直角二等辺三角形の2本の辺の真ん中を結ぶ直線です。折り方は,直角の印以外の実線が山折りで破線が谷折りです。

H31nada1-11.jpg

[解説]
図のように四面体の中に四面体の穴があり,更にその四面体も頂点で内側に四面体状に折られています。
H31nada1-11kaisetu1.jpg
これらの四面体は全て3面が直角二等辺三角形で相似です。

H31nada1-11kaisetu2.jpg

直角二等辺三角形の1辺が1cmの四面体の体積は1×1÷2×1÷3=1/6 cm^2
体積の比は大きい順に
4×4×4:2×2×2:1×1×1=64:8:1より
(64-8+1×2)×1/6=29/3cm^3
展開図の問題は定番で,この形は立方体から切り落としたもの,基本的な立体を組み合わせたものなどよくあるパターンを過去問で慣れておけばやりやすい問題です。

○大問12
右の図の六角すいは,底面が正六角形でOはその中心です。頂点Pと点QはどちらもOの真上にあり,PQの長さはQOの長さの2倍です。3点A,B,Qを通る平面でこの六角すいを切り2つの立体に分けるとき,頂点Pを含む方の立体の体積はもとの六角すいの体積の[   ]倍です。

H31nada1-12.jpg

[解説]
問題の図を見ると底面の正六角形が正三角形に分割されているのでPを頂点とした6つの三角すいを考えて,それらを切断して頂点Pを持つ3辺の比がそれぞれa倍,b倍,c倍になると体積はa×b×c倍になることを使うことが考えられます。
H31nada1-12kaisetu1.jpg
図のようにABの中点M,DEの中点Nとすると三角形PMNにおいてA,B,Qを通る切断面とPNの交点RはPNの中点になっています。
H31nada1-12kaisetu2.jpg
よって一つの三角すいの体積は全体の1/6より
1/6×2/3×(2/3×1+1×1+2/3×1+2/3×1/2+1/2×1/2+2/3×1/2)=13/36倍
難問ではなく標準的な問題を組み合わせた問題でしたが,よくある処理が使えないかを考えて,それを使うためには何がわかれば良いのか解法の過程が問われる良い問題です。(畠田)

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