数理教育研究会

開成中学校 算数 問題解説&入試分析★2020年(R2年)

今回は開成中学をとりあげます。

【入試資料分析】
受験者数は今年も例年通りでした。

受験者数1188人,合格者397人,倍率3.0

算数の合格者平均は6割を切っており,ここ数年では一番低くなりました。
どの問題も問題文の理解も難しく典型的でもないものがほとんどで全体的にかなり難しかったようです。

合格者平均211.3点
各教科の平均点は
(合格者平均 全体平均 満点)の順に
国語(51.5 42.3 85)
算数(49.5 38.6 85)
理科(56.0 48.1 70)
社会(54.3 50.0 70)

【問題分析】
○大問1…グラフからAとBの速さの差がわかり,速さを組み合わせます。例えば1分から2分の間は差が45cm/分なので停止と毎分45cmの組み合わせしかないなど場合分けしてけます。意外と場合分けが多くなく数学的には簡単ですが,問題文の理解や,どう考えていけばいいか,開成らしい難しさだったと思います。

○大問2…問題文はそんなに長くなく、計算は角速度を使うぐらいではありますが,①の移動の開始時と,④の移動の時間を調節しないと解けないので,問題の把握が難しかったと思います。

○大問3…今回はこれを扱いたいと思います。

○大問4…光が平行なタイプの影の問題です。この問題が一番理解がしやすく,アプローチの仕方もわかりやすかったと思いますが展開図に影を塗るのが間違えそうになるので,処理能力が求められています。

(問題)令和2年 開成中学校 算数 大問3
あるクラスで,生徒全員から決まった金額を集めることになりました。そこで,学級委員の太郎君と花子さんは集めやすくするために次のようなルールを作りました。

ルール1 使えるお金は1円玉,5円玉,10円玉,50円玉,100円玉,500円玉の6種類の硬貨とする。
ルール2 おつりの無いように持ってくる。
ルール3 硬貨は,1人につき10枚まで持ってくることができる。

(1)クラスの生徒40人から28円ずつ集めることにしました。
(ア) ルールに合うように28円を持ってくる方法は全部で何通りありますか。
(イ) 集まったお金のうち,1円玉を数えたら165枚ありました。このとき,5円玉を1枚も持ってこなかった生徒は何人ですか。

(2)このルールについて,太郎君と花子さんは次のようなやり取りをしています。空らん①~⑧にあてはまる数を答えなさい。
太郎 「集める硬貨が多くなり過ぎないようなルールを決めたけど,このルールだと集められない金額ってあるよね。」
花子 「たしかにそうね。例えば389円を用意するとしたら,ルール1とルール2を守れば,最低でも[ ① ]枚の硬貨が必要だから,ルール3を守れないわね。」
太郎 「このような金額ってどれくらいあるのかな。」
花子 「そのうち一番低い金額は[ ② ]円だとわかるけど,たくさんありそうね。」
太郎 「49円までの金額を用意するのに必要な最低枚数の表を作ってみたよ。」

kaisei20m1.jpg

花子 「なるほど,この情報と50円玉,100円玉,500円玉の組み合わせを考えると,ルール1とルール2を守れば,ルール3を守れないものは,300円までの金額では[ ⑦ ]通りあり,1000円までの金額では[ ⑧ ]通りあるわね。」
太郎 「次に集めるときはルールを考え直してみないといけないね。」

(1)
(ア)

kaisei_2020_m3_1.jpg

表を書くのがお決まりの処理です。
4通り

(イ)28円になるには1円玉は3枚か8枚かの二択です。
3枚使った人は5円玉を必ず持ってきています。
1円玉を8枚使った人は硬貨は残り2枚しか持ってこれないので10円玉2枚に決まり5円玉を持ってきていないのでこの人数を求めたらよいことがわかります。

つるかめ算から全員1円玉を3枚使ったとすると1円玉は40×3=120枚になるので1円玉8枚使った人数は
(165-120)÷(8-3)=9人

(2)

390円をルール1とルール2を守って出来るだけ枚数を少なくするには金額の大きい硬貨を出来るだけ持ってきた場合です。
500円玉は使えない
100円玉は出来るだけ使って3枚で残り389-100×3=89円
50円玉は出来るだけ使って1枚で残り89-50=39円
10円玉は出来るだけ使って3枚で残り39-10×3=9円
5円玉は出来るだけ使って1枚で残り9-5=4円
1円玉は4枚必要で
3+1+3+1+4=12枚必要となります。


一番低い金額で枚数を出来るだけ多くするには
金額の小さい硬貨を,金額の大きな硬貨で繰り上げにならないように出来るだけ使っていきます。
11枚になればよいので
1円玉を4枚で残り11-4=7枚
5円玉を1枚で残り7-1=6枚
10円玉を4枚で残り6-4=2枚
50円玉を1枚で残り2-1=1枚
100円玉を1枚
よって1×4+5×1+10×4+50×1+100×1=199円

③④⑤⑥
500円玉は1枚まで,100円玉は4枚まで,50円玉は1枚まで,10円玉は4枚まで,5円玉は1枚まで,1円玉は4枚までのルールで数えてください。

要領よく解くとすれば49円までなら
10円玉4枚と5円玉1枚と1円玉4枚の10×4+5×1+1×4=49円の4+1+4=9枚
から選ぶことになりますが

選んだ☐円で△枚の硬貨に対して,残りの硬貨は49-☐円で9-△枚になっています。
だから5枚の場合は9-5=4枚の場合と同じ9通り
6枚の場合は9-6=3枚の場合と同じ7通り
7枚の場合は9-7=2枚の場合と同じ5通り
8枚の場合は9-8=1枚の場合と同じ3通り
とわかります。


0円~49円まではわかっているので50円~99円は50円玉を1枚追加して考えればよいことがわかります。
表より一つ追加して10枚をこえるものはありません。
同様にして100円~149円は100円玉を1枚追加で表より10枚をこえるものはありません。
150円~199円は100円玉1枚と50円玉1枚の2枚追加で10枚をこえるものは表の最低枚数9枚の1通りに対応して1通り
200円~249円は100円玉を2枚追加で10枚をこえるものは同様に1通り
250円~299円は100円玉2枚と50円玉1枚の3枚追加で10枚をこえるものは表の最低枚数
8枚と9枚に対応して1+3=4通り
300円は100円玉3枚で大丈夫です。
よって1+1+4=6通りとわかります。

⑧同様にして
300円~349円…4通り
350円~399円…9通り
400円~449円…9通り
450円~499円…16通り
500円~549円…0通り
550円~599円…1通り
600円~649円…1通り
650円~699円…4通り
700円~749円…4通り
750円~799円…9通り
800円~849円…9通り
850円~899円…16通り
900円~949円…16通り
950円~999円…25通り
1000円…0通り

よって
(1+4+9+16)×4-16+25=129通り

この問題は小さい数字で実験をしてみて規則性を発見するのに良い練習の問題です。開成でよく出るタイプのアプローチなのでしっかり練習していきましょう。がんばってください(畠田)

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