数理教育研究会

麻布中学校 理科 問題解説&入試分析★2020年(R2年)

今回は麻布中学校の理科を取り上げます。

【問題分析】
大問1…動物の誕生の問題です。問2ではうなぎの幼生レプトセファルスを知ってるかなど、わりとマニアックな知識は問われています。しかしリード文を読めば海流に乗って移動すると書いているなど、基本的には問1以外は読解力を問われています。
この問題は養殖のウナギは河口にやってきたシラスウナギを捕まえているので結局ウナギは減少する、養殖で育てて放流しても養殖ではほとんど全てオスになるので卵を産むウナギはほとんどできないことなど勉強になります。

大問2…バターを使ったパイ、パウンドケーキ、クッキーがどのようにして膨らむのかなどの問題で内容は化学です。リード文に生クリームは絞った牛乳の表面に浮かび上がってくる、水分を少なくして現れた固体がバター、バターには15%の水分が含まれていることなど書いているのでそれらを使って解いていくことになり、読解力が必要です。
この問3を扱いと思います。

大問3…光の問題です。長いリード文を読みフェルマーの定理を理解して考えて解いていくことになります。この問8も扱いたいと思います。

大問4…大地の変化の問題です。これも長いリード文を読みとり、考えて解いていくことになります。風化には物理的風化、化学的風化などがあり、読み取って答えていきます。風化には気候を一定に保とうするはたらきがあることも面白いです。

(問題)2020年度 麻布中学校 理科 大問2の問3
小麦粉には主にデンプンとタンパク質が含まれています。小麦粉と水を混ぜてパイ生地を作ると、タンパク質どうしはつながってグルテンと呼ばれるやわらかく弾力のあるものに変わります。グルテンはそのまま焼くとかたくなります。このグルテンを含んだパイ生地にバターをはさむと、図1のようにパイ生地が2層になります。これらを二つ折りにすると、図2のように内側の生地どうしはくっついてしまうので、パイ生地は3層になり、図3のように三つ折りにするとパイ生地は4層になります。このようにバターをはさんだパイ生地を、平らに伸ばしてから再び織り込むことを何度か繰り返して、200℃~220℃の高温で素早く焼き上げると、たくさんのうすい層を持つパイができあがります。
azabu2020r1.jpg

(1)図1のパイ生地を2回三つ折りするとパイ生地の層は何層になりますか。
(2)図1のパイ生地を5回三つ折りするとパイ生地の層は何層になりなすか。

[解説]
(1)
azabu_2020_kaisetu_rikam3-1.jpg
図のように2つの赤い矢印のところで生地がくっついて2層減ります。
4×3-2=10層

(2)同様にして考えると
3回で10×3-2=28層
4回で28×3-2=82層
5回で82×3-2=244層
とわかりました。

(問題)2020年度 麻布中学校 理科 大問2の問3
17世紀後半にフェルマーは、光の進み方に「二点間を進む光は、考えられる経路のうち、進むのにかかる時間が最も短い経路を通る」という決まりがあるのではないかと考えました。たとえば、光源から出た光は真っすぐに進むという性質がありますが、フェルマーの考え方を用いれば、光がこのような性質をもつのは、真っすぐ進む方が遠回りして進むよりも、かかる時間が短いからであると説明できるのです。

光が曲がって進む現象は、宇宙でも観測されることがあり、太陽などの重い星の近くを通過するときは、光が曲がることが知られています。この原因を、次のように単純化して考えてみましょう。図8は、四隅が固定された軽いテーブルクロスが空中に張られた様子を真上から見たものです。このテーブルクロスの上に球を静かに置くと、図9のように、球の周辺部分のテーブルクロスが伸びてたわみました。ここで、置く球をさらに重いものに交換した後、アリがテーブルクロスの上を、図8の点Pから点Qに向かって、途中で速くなったり遅くなったりせずに、決まった速さで進む場合について考えます。
azabu2020r2.jpg

問8 テーブルクロスの上に置かれた球がとても重いとき、点Pを出発したアリは、図8に示した経路のうちのどれを通ったときに、点Qまで到達する時間が最も短くなると考えられますか。ア~エから1つ選び、記号で答えなさい。

[解説]
azaburi4.jpg
PとQを直線で結ぶと赤い直線のようになります。
これは最短経路になります。

azabu_2020_kaisetu_rikam3-2.jpg
よって図のようにテーブルクロスに書き込むと赤い線が光の経路でとなります。

このたわみのないテーブルクロス(座標)が三次元空間の観測者にとっての位置関係で自分たちは自分たちのいる空間が曲がっていると感じませんが、
一つ次元の高い四次元空間の神視点の観測者にとっては、たわみのあるテーブルクロスのように曲がっているように見えます。

歪みは一つ次元が大きい空間でしか表現できないので、前上から見る(正射影する)という言葉で次元を一つ落として、テーブルクロスがたわんでいない三次元の空間を表現しています。

ちなみにこの星Qにいる人から星Pを見た場合は,星PはP’の位置に見えます。

(畠田)

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