数理教育研究会

約束記号

灘中学校 算数(1日目)2021(R3)入試分析

数理教育研究会の畠田和幸です。

コロナ禍となって初の入試になります。
コロナ禍の影響なのか出願者数や難易度に変化があった学校が多くなりました。
特殊な状況の中、勉強をして受験をすることになりましたが受験勉強をやりきったことはこれからの人生で役に立つ大きな経験になると思います。

それでは最初は灘中学校の1日目です。


【入試資料分析】
今年の実質倍率は2.86です。
ここ数年ではもっとも多かった昨年でしたが今年は例年程度となりました。
(H24)2.81(H25)2.81(H26)2.97(H27)2.61
(H28)2.67(H29)2.76(H30)2.88(H31)2.70(R2)2.98(R3)2.86

次に平均点です。
昨年の算数が第1日目,2日目ともにここ数年で平均点が一番高かったところですが、今年の算数は第2日目は例年の高め程度でしたが、第1日目が大幅に平均点が高くなり算数全体としてここ数年で平均点が一番高くなりました。

(教科,受験者平均点,合格者平均点)の順に
(国語1日目,57.7点,63.2点)
(国語2日目,71.0点,78.0点)
(国語合計,128.7点,141.2点)
(算数1日目,65.1点,83.0点)
(算数2日目,54.3点,67.8点)
(算数合計,119.4点,150.8点)
(理科,68.5点,76.5点)
(総合,316.7点,368,5点)

算数第1目目は去年が易化になりましたが、更に大きく易化となりました。
解き方が不明で悩むというような問題はありませんでした。
8割以上はとりたいところです。

【問題分析】
大問1…計算問題です。2021=43×47が使われています。受ける年の西暦は普段から素因数分解しておきましょう。

大問2…水の体積を扱う基本的な比の問題。

大問3…重複組み合わせなど数学的な知識があれば有利。なくても、数え上げるのは大変ではない。

大問4…少し複雑であるが、標準的な3点の移動の問題。

大問5…灘らしい整数問題。灘を受けるなら(m×nをpで割った余り)=(mをpで割った余り×(nをpで割った余り)をpで割った余り)を練習しておこう。

大問6…よく出題されてきている約数をすべてかける約束記号。今回はこれを扱います。

大問7…灘らしい整数問題。これもPART2で扱いたいと思います。

大問8…図形の回転の問題。少しひねられているが標準的。

大問9…面積の問題。難関校でよく出題されるような平面図形の問題をやっていると解きやすい。

大問10…相似の問題。特にあまり工夫などはない。

大問11…空気と容器は体積が一定なのでどの面が下でも常に同じ相似比。あまり難しくはないが面白い。

大問12…灘恒例の展開図。過去問で慣れていると、だいたいはありきたりの立体から切り落としていったものであるとわかりやすい。


(問題)R3 灘中学校 算数第1日 大問6

2以上の整数Aに対して、Aの約数をすべてかけあわせてできる数を[A]と書きます。例えば、
[6]=1×2×3×6=36
です。
B=6のとき[2×B]/B=[① ]です。また、[2×C]/[C]=192となる2以上の整数Cは[② ]です。

[解説]
192=2×2×2×2×2×2×3
よりCは2と3の素因数のみ持つ。
C=2ⁿ×3ᵐとおくと

図より[C]は青の部分の(n+1)×(m+1)個の約数を全てかけることになります。
[2×C]は[C]と比べてm+1個の赤の部分の約数が増えています。

3は1つ、2は6つ増えればよかったので
m+1=2
(m+1)×(n+1)=6
よりm=1,n=2とわかります。

したがってC=2²×3=12


今回の第一日目はかなりの易化でかなり平均点の高い争いになりますが、灘らしい問題も出ています。しっかり過去問や難関校の頻出問題を練習して8割5分ほどとることが出来れば合格平均点いけます。(畠田)

麻布中学校 算数 問題解説&入試分析★2018年(H30年)

今回は麻布中学をとりあげたいと思います。

出願者数933人
合格者数378人
倍率2.45
合格最低点106/200
配点は国語60点算数60点理科40点社会40点です。

今年の算数は処理が複雑なものはほとんどなく、小問により誘導されているのでやりやすかったかもしれません。
それでは麻布恒例の最後の実験をして掴んでいく問題をとりあげます。

(問題)H30年 麻布中学校 算数 大問6
2をN個かけ合わせてできる数を<N>と表すことにします。例えば
<3>=2×2×2=8,<5>=2×2×2×2×2=32
となります。ただし,<1>=2と約束します。
(1)<1895>の一の位の数字は何ですか。

(2)<12>+<2>と<13>+<3>を計算しなさい。

(3)<2018>の下2桁を答えなさい。
ここで,下2桁とは十の位と一の位の数字の並びのことです。例えば,1729の下2桁は29で,1903の下2桁は03です。

(4)<53>の下3桁は992です。<N>の下3桁が872となるNを2つ求めなさい。ここで,下3桁とは百の位から一の位までの数字の並びのことです。

(1)2をかけていくことを考えます。
一の位には十以上の位の数字から影響を受けません。
一の位だけ考えて
<1>は2
<2>は2×2=4
<3>は4×2=8
<4>は8×2=16で6
<5>は6×2=12で2
より<1>と<5>で一の位が等しいので2,4,8,6の周期4の繰り返しとなります。
1895÷4=473…あまり3
より<1895>の一の位は<3>の一の位と等しくて8とわかります。

(2)<12>+<2>=4096+4=4100
<13>+<3>=2×4100=8200

(3)麻布の最後の問題で(2)が関係ないということはあまりありません。
<2018>の下2桁を答えなさいと言うことですが,まずは(2)を使うのではないかと考えます。

(2)では<○+10>+<○>=(100の倍数)とよみとれます。
これは<○>の下2桁をNとすると、<○+10>の下2桁は100-Nと解釈できます。
すると<○+10>+<○+20>=(100の倍数)も成り立つので<○+20>の下2桁はNとわかり周期は20です。

2018÷20=100あまり18
より<2018>の下2桁は<18>の下2桁と同じです。
さらに<8>=256からこの下2桁は56
<18>の下2桁は100-56=44
なので<2018>の下2桁は44とわかります。

(4)(3)と同じようにできないか考えてみます。
992や872という数字ではピンとこないで逆を考えてみます。
1000-992=8,1000-872=128
これは<3>と<7>ですね。

992+8=1000から
<53>+<3>=(1000の倍数)
より
<○+50>+<○>=(1000の倍数)
とわかりました。

と言うことは同じように<○>の下3桁がNならば,<○+50>の下3桁は1000-N,<○+100>の下3桁はNで周期100です。
<7>=128と872+128=1000より
<50+7>=<57>の下3桁は1000-128=872とわかります。
周期100なので<57+100>=<157>の下3桁も872とわかります。

(注…数学的な背景としては
まず余りをマイナスまで拡張して考えて,<0>=1と定義します。
aのb乗をa^bと書くことにします。
また10=2×5,100=(2の2乗)×25,1000=(2の3乗)×125より5,25,125で割ったあまりを考えます。
さらに二項定理の展開を考えて
(pm+r)^p=Σ(k=2~p)pCk・(pm)^k・r^(p-k)+pm・pC1・r^(p-1)+pC0・r^p=(p^2の倍数)+r^p
より
((pで割るとあまりがrの自然数)^pをp^2で割ったあまり)=(r^pをp^2で割ったあまり)
であることを使います。
2^2=4は5で割ったあまりは-1
2^10=(2^2)^5=(5で割るとあまり-1)^5を25で割ったあまりが-1
2^50=(2^10)^5=(25で割るとあまり-1)^5を125で割ったあまりが-1であることから
<2>+<0>=(10の倍数)より<○+2>+<○>=(10の倍数)
<10>+<0>=(100の倍数)より<○+10>+<○>=(100の倍数)
<50>+<0>=(1000の倍数)より<○+50>+<○>=(1000の倍数)
となります。)

具体的に計算して実験してみたり、前の問いが誘導になっていないか?麻布の最後の問題らしい問題なので麻布対策に練習してみてください(畠田)

PAGE TOP